HOME > アロマ環境について > 全国のかおりレポート > No.34 金華山の原生林と鹿

金華山の原生林っと鹿 (宮城県) 会報誌No.45掲載(会員:加藤俊武)
仙台から車で2時間、宮城県石巻市牡鹿半島の南端、かつては捕鯨基地として栄えた鮎川港から定期船で25分、金華山島が現れます。松尾芭蕉の『奥の細道』に「こがね花咲く島」として紹介され、黄金山神社や護摩壇などのある東奥三大霊場(出羽三山、恐山、金華山)の一つに数えられる霊島です。金華山島は周囲約26km、面積約12平方kmで、ほとんどが原生林に覆われていて、野鹿、野猿などが棲み、心を和ませてくれます。海岸線は奇岩怪石の連続で、思わず見惚れてしまいます。

金華山島の面積に対して不自然なほど高い山「金華山」は、中央に標高444.9mの頂上をもつ山ですが、この島は火山島ではなく全山が花崗岩の島で、その花崗岩は島の至る所に露出して変化に富んだ景観をつくっています。風化の激しい尾根上では花崗岩が露出して天柱石や黄金石などの見事なトア(岩塔)をつくり、波の浸食の大きい海岸線では千畳敷や百畳敷、大函・小函などの白亜の巨大な崖を形成しています。

全島が神域とされ、金華山黄金山神社の創建は聖武天皇時代の産金の歴史と深く関わっており、藤原氏、葛西氏、伊達氏と、時の権力者は金華山を手厚く保護しました。そのために金華山の自然が残されたのです。気候が温暖で、海霧からの水分の影響をいつも受ける金華山島は、豊かな植生に恵まれています。海岸地帯はアカマツやクロマツ林、その上はモミ林となり、標高200mを超えるとブナ林となり、高度に対応して植生が変化しています。

6月中旬、金華山の香りを訪ねる1泊の旅。黄金山神社の参集殿に寄宿し、翌朝4時頃起床。やはり深い海霧が全島を覆い、早朝の桟橋から見る金華山からは、まさに原始林の香り漂う神聖な「気」が迫ってきます。黄金山神社の脇の登山道の看板から、沢伝いに約30分も登ると、古代ロマンの香りに包まれ、神秘な精神世界に埋没してしまうかのようです。この圧倒される神聖で、かつホリスティックな感覚の中で我を見つめる貴重な機会をこそ大事にしたいと思いました。我に返って、見渡す周辺に遊ぶ野生の鹿数頭。原生林と鹿の絶妙な取り合わせでした。

足元に目を落とすと、ふかふかの林床には子どもの握り拳ほどの淡いピンク色の紅ヤマシャクヤクがひっそりと一輪、半開きのまま伏し目がちに佇んでいます。足元にチクッと痛みを感じ、見ると金華山に植生する深い切れ込みをもった葉の先に鋭いしっかりとしたトゲをもつキンカアザミでした。多数見受けられるようです。ここはまさに遺伝子の香り漂うバージンフォレストなのです。

山を下り随神門に戻ると、鹿が数頭、私を見ているようです。金華山には500頭前後の鹿が生息しているそうで、うち30頭ほどが境内付近におり、参拝者の気持ちを和らげてくれます。神社の神事のひとつに「鹿の角切り」行事があり、今年は10月6日に「神鹿慰霊祭」、10月7日・14日に「神鹿角切り行事祭」が行われます。境内にいる約30頭の牡鹿を多数の勢子によって捕りおさえ、神官が角を切る勇壮な行事が鹿山公園にて催されるそうで、わが国では金華山と奈良だけの大変珍しい行事だそうです。その折はぜひ来て見たいと思います。夕暮れどき、境内の芝の丘陵地に親子の野猿7〜8頭が姿を現してくれました。暮れなずむやわらかな空気の中に、ほのぼのとした親子の愛情が伝わってくるようで、こちらもやさしい気持ちにさせられました。

金華山は島で、しかも霊島であるがゆえに残っている原生林と野生の鹿、猿、そしてこの島特有の植物に恵まれ、豊かな大自然が息づいています。この2日間の旅は、私たち人間がより全人的に生きるためには、この大自然が大切であることを改めて思い知らされ、幾世代までもと、祈らずにはいられません。
一覧ページへ戻る
FAQ