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法善寺の線香 大阪府) 会報誌No.43掲載(会員:御代田澄江)
緑濃い苔を全身にまとった独特の姿で有名な水掛不動尊がご本尊の法善寺は、大阪市中央区難波1-2-16。地下鉄御堂筋線なんば駅14番出口から徒歩5分のところにあります。

観光で大阪にやって来たのですが、特に法善寺界隈の賑わいには、無事着いた安心感とともに大きな驚きを感じました。旅行会社の旗をもったガイドの後ろについてツアー客と思われる人の行列が次々と行き過ぎます。その人並みをかき分けるようにして、話題の法善寺を訪ね、お線香の香りに浸り、水掛不動尊にお参りしてみたのでした。

法善寺のお線香の香りは、参詣客が多ければ多いほど色濃く漂うことになります。その日はウィークデイの昼近くということもあり、参詣客は決して多いとはいえませんでしたが、それでもお線香は絶えることなく手向けられ、その煙はたゆたいつつ静かに右手方向に漂い流れてゆく、風もない穏やかな日和でした。

「お線香を一束ください」
「どうぞ、60円です。自分でとってください」
お線香売りのおばさんは、愛想よくも悪くもなく、という感じ。右手のお灯明から火をもらい、前の客にならってお線香を手向け、漂う煙を手でまねき、その香りを大きく吸い込みました。さらに前へ進み、お不動様にお参りしました。商売繁盛、恋愛成就、古来より多くの人々の祈りを受け、全身が苔むした中央の大きなお不動様ご本尊、それに従う左右二体の像は、願い事とともに人々に撫でられ、お頭だけ苔がとれてつるつるになっていました。「私は3回もお水をおかけしました。どうかよろしく、お不動様…」

法善寺界隈はお線香の香りに混じっていろいろなにおいが漂っており、当然、多種多様の店が軒を連ねていました。インドカレー、ラーメン、コーヒー、夫婦ぜんざい…。 ちょうど昼頃でした。お堂のすぐ右手の名物、夫婦善哉の店の暖簾をくぐりました。出されたお盆には、なぜか二椀のぜんざい。何で二椀かといえば、夫婦だからとか、二つで一人前とか、椀が二つのほうが多く見えるなど、いろいろ解釈があるようです。

ケイタイでお椀の写真を撮ろうと角度を苦心していますと、何を思ったのかお店の人が私を撮ってくれるといいます。え!私を? あの、それは、という間に準備のない、ボーっとした顔を撮られてしまいました。もっとも、いつもの通りの顔ですが。ここでは、カップルのお客が帰るとき、必ず言い添える言葉があります。「ありがとうございました。どうぞお幸せに」そう、これが夫婦善哉なのです。

インドカレーのお店の向かい側には、タイ式古式マッサージの店。看板に、何とアロマテラピーとあるではありませんか。うーん。残念。今日は時間がない。帰る時間となってしまったのでした。次の機会にはきっと体験したい。学習を重ねることは大事ですものね。

新幹線が滑り出すと、ふっと湧いてきた旅愁の思い、線香売りのおばさん、夫婦善哉の店の人、道を教えてくれたお兄さん。いろんな人との出会いまでが、すーっと後に遠ざかっていくような気がした早春の宵でありました。

(写真提供:環境省)
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