HOME > アロマ環境について > 全国のかおりレポート > No.28 半田の酢と酒、蔵の町 |
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| 静かに流れる運河と黒板囲いの蔵――ここに佇むと、まるでモノクロ写真の中にいるようです。 半田は名古屋市の南、伊勢湾と三河湾に囲まれた知多半島の中央に位置します。豊かな自然と良質な水、暖かな気候はおいしい米を育んできました。江戸時代の先人たちは海上輸送に便利な地の利と自然の恵みを活かし、醸造業を発展させました。「知多の半田は蔵の町、酒蔵、酢の蔵、木綿蔵」と古くから歌われるように、半田運河近辺には歴史を物語る蔵が点在しています。その中にある博物館「酢の里」と「國盛 酒の文化館」は醸造の歴史や蔵人の心を伝えるとともに、約200年にわたって醸造蔵として生き続けています。ではまず、酢の総合博物館「酢の里」を訪ねてみましょう。 風情ある蔵の風景を眺めながら、タイムスリップしたような感覚に浸っていると、そよ風に乗ってさわやかな酢の香りが漂ってきます。蔵の中に入ると、ほのかな酒粕の香りに包まれて温かい気持ちになります。ここは酒粕を原料とした粕酢発祥の地。酒粕を長時間寝かせておくことで旨みが増し、料理を引き立てる風味豊かな粕酢となります。粕酢は飴色の深い色合いから赤酢とも呼ばれ、当時は江戸前のにぎり寿司に用いられて好評を博したそうです。昔の粕酢造りに使われた見上げるほどの大樽や、用途によって形が工夫された桶などから温もりが感じられます。同時に、当時の酢造りが大変な重労働であったことが偲ばれます。 続いて、現在の酢造りの様子として、純米酢や玄米酢の発酵室がガラス越しに見学できます。酢酸発酵が行われる最も重要な工程ですが、昔ながらの環境が保たれ、換気や保温マット(昔はむしろを使っていました)により温度調節がなされています。純米酢の発酵室からは甘くやわらかな香り、玄米酢の発酵室からは重みのある独特の香りが漂います。工場の方々はこの香りで発酵の進み具合がわかるそうです。「常に酢の香りに包まれているため、かぜをひきにくいのですよ」と教えてくださいました。酢が身体によいことは広く知られていますが、揮発する酢の成分も何らかの効果をもたらしているのでしょう。 重厚な黒壁に白い漆喰窓をもつ蔵は「國盛 酒の文化館」です。軒先には蔵元のシンボルである杉玉が「おいしい酒を仕込んでいます」と告げています。昔ながらの急傾斜の階段を上った2階が博物館。1階で酒造りが行われているため、発酵や熟成の度合いによって、そのときどきの香りが立ち上ってくるそうです。すすで燻された柱や屋根板が年月の重さを感じさせ、杜氏の酒造り唄が心に響いてきます。天井には、大桶や材料の上げ下ろしに使った「アミダ」と呼ばれる大きな滑車がそのまま残されています。伝統の道具に囲まれていると、“時”がゆったり流れていくように感じられます。その中に酒を蒸留する道具「らんびき」を見つけました。江戸時代の人々も、蒸留時に得られるうっとりとする香りに、至福のひとときを味わっていたことでしょう。ほかには「ねこ」や「くつ」といったおもしろい名前の道具があります。これは幼い若衆がたくさんの道具を覚えやすいよう、身近なものにたとえて名づけたからだそうです。杜氏の上下関係は厳しく、若衆は道具を運んだり、ささら(洗い道具)を手に凍るような水で桶を洗ったりすることが仕事でした。 蔵の中では米が日々姿を変えていきます。杜氏の頭が五感を研ぎ澄ませ、愛情を込めて酒を育て上げる熱い思いがひしひしと伝わってきます。「よきにつけ悪しきにつけ、日本人には酒を酌み交わす習慣があるわね」とガイドさんがしみじみおっしゃった言葉が印象に残りました。 4月下旬からゴールデンウィークにかけて、半田運河に鯉のぼりが並んで泳ぐ風景が見られます。運河を渡る風が酢と酒の香りを乗せ、半田の歴史と産業を伝えます。うららかな春の一日、蔵の町半田をゆっくり散策してお楽しみください。 |

風情ある蔵の風景を眺めながら、タイムスリップしたような感覚に浸っていると、そよ風に乗ってさわやかな酢の香りが漂ってきます。蔵の中に入ると、ほのかな酒粕の香りに包まれて温かい気持ちになります。ここは酒粕を原料とした粕酢発祥の地。酒粕を長時間寝かせておくことで旨みが増し、料理を引き立てる風味豊かな粕酢となります。粕酢は飴色の深い色合いから赤酢とも呼ばれ、当時は江戸前のにぎり寿司に用いられて好評を博したそうです。昔の粕酢造りに使われた見上げるほどの大樽や、用途によって形が工夫された桶などから温もりが感じられます。同時に、当時の酢造りが大変な重労働であったことが偲ばれます。
重厚な黒壁に白い漆喰窓をもつ蔵は「國盛 酒の文化館」です。軒先には蔵元のシンボルである杉玉が「おいしい酒を仕込んでいます」と告げています。昔ながらの急傾斜の階段を上った2階が博物館。1階で酒造りが行われているため、発酵や熟成の度合いによって、そのときどきの香りが立ち上ってくるそうです。すすで燻された柱や屋根板が年月の重さを感じさせ、杜氏の酒造り唄が心に響いてきます。天井には、大桶や材料の上げ下ろしに使った「アミダ」と呼ばれる大きな滑車がそのまま残されています。伝統の道具に囲まれていると、“時”がゆったり流れていくように感じられます。その中に酒を蒸留する道具「らんびき」を見つけました。江戸時代の人々も、蒸留時に得られるうっとりとする香りに、至福のひとときを味わっていたことでしょう。ほかには「ねこ」や「くつ」といったおもしろい名前の道具があります。これは幼い若衆がたくさんの道具を覚えやすいよう、身近なものにたとえて名づけたからだそうです。杜氏の上下関係は厳しく、若衆は道具を運んだり、ささら(洗い道具)を手に凍るような水で桶を洗ったりすることが仕事でした。