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吉備丘陵の白桃(岡山県)
ふるさとより送り来りし桃の実のにほひの中に夜々寝る」岡山の歌人、岡野直七郎の歌にもあるように、桃というとあの甘い香りが真っ先に思い浮かびます。

広大な桃畑で有名な岡山市一宮地区ですが、一宮という地名は平安時代、国司が国内で1番目に参拝した神社がある地域という説が有名で、その神社にあたるのが岡山では「吉備津彦神社」(別名「朝日の宮」)になります。境内へと向かう石段を登っていくと、思わず息を飲むほどの荘厳な大木が見えてきます。「平安杉」と名づけられたこの杉は、なんと樹齢850年。昭和5年に起きた火災によって燃えた部分の治療も終えて、さらに力強くやさしく私たちを見守ってくれるのを感じます。そんな一宮は、桃だけではなくブドウも多くつくられています。桃団地・マスカット団地と呼ばれるこのあたり一帯は、丘の大半が畑で埋め尽くされ、四季折々の景観や香りで楽しませてくれます。

さて、岡山の桃についてですがその歴史はとても古く、今から約1900年前の桃の種が岡山市津島遺跡で出土しています。同様に弥生時代の遺跡である山陽町用木遺跡からも、桃の種が出土しているそうです。

桃は、食べる直前に氷水で少し冷やして手で皮を剥いて丸ごと豪快にかぶりつくのが最も美味しい食べ方だといわれていますが、きっと昔の人たちも桃の花の香りや甘い実に笑みがこぼれていたのでしょうか……。


桃といえば、昔話の「桃太郎」を思い浮かべる方も多いと思いますが、岡山には桃太郎の銅像などが数多く置かれてあり、「桃太郎大通り」と名づけられた通りや「桃太郎まつり」があるなど、桃太郎ゆかりの地として全国的に知られているようです。先に書いた「吉備津彦神社」とともに、その側にある「吉備津神社」が桃太郎伝説発祥の地として有力なようです。ところで桃太郎の昔話はご存知かと思いますが、川から大きな桃が流れてきて、その桃から生まれた桃太郎が、犬・猿・キジと鬼を退治するというもの。どうやらあのストーリーのもとは次のようなことのようです。

「吉備津彦(桃太郎)は、吉備津彦神社・吉備津神社の御祭神ともされる古代の英雄で、この地方を荒らしていた温羅という山賊(鬼)を倒し平和をもたらした」と。温羅についても、さまざまな説があるので興味のある方は調べてみるとおもしろいかもしれませんね。それはそうと、お供とされる犬・猿・キジは一体どこから出てきたのでしょう。それは、十二支からきたといわれています。鬼門の方角からやってくる鬼(厄)を、裏鬼門の方角にいる犬・猿・キジ(戌・申・酉)が桃太郎とともに戦う(厄払いする)。桃というのは、古来より疫病や災厄をはらう霊力がある植物とされていたので英雄の名前にまで用いられたのでしょうね。こうやって調べていくうちに、いろいろなことがわかってきて桃の花を見る目も少し変わったような気がします。

美しい自然に囲まれて、よい香りを嗅ぐと生きものは皆癒されます。その癒しに歴史や文化も加わることで、充実感や満足感も加わるような不思議な感覚を今回のレポート作成で味わうことができました。

私が訪れた時季は、まだ寒くて木々の芽吹く前でしたが桃の花が満開になるころもう一度、今度は厄払いも兼ねて美しい桃畑を見に行ってみようと思います。そして、かおり風景100選に選ばれたほかの地もできるだけ多く訪れてみようと思っています。
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