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大石田町そばの里(山形県)
山形県にはおいしいそば屋がたくさんあり、そば好きな私は、週末はよくそばの食べ歩きをしています。特にそば屋が多く存在する最上川流域は「おくの細道最上川そば三街道」と呼ばれています。その三街道のひとつでもある大石田町に、そばの香りを尋ねに行ってみました。

大石田は中心に最上川が流れ、雄大なのんびりした景色を楽しむことができます。かつてその最上川が重要な交通路であり、大石田は舟運の中心河港として栄え、幕府の舟役所が置かれた所です。現在、最上川に面した特殊堤防にはその当時を忍ばせる白壁の塀蔵が描かれています。この壁画は約602mと世界最長でギネスブックにも申請中だそうです。また、松尾芭蕉や正岡子規、斉藤茂吉をはじめとする俳人・歌人や金山平三、小松均など多くの画人がこの舟運の町を愛し、訪れており、町のあちこちで彼らの足跡を見ることができます。

さて、大石田がそばの里として有名なのは、そばづくりに適した気候であり、県内でもそばの生産量がトップクラスを誇っているからです。夏と冬、また昼夜の寒暖の差が激しく、この気温差が澱粉の蓄積量を多くし、豊かな風味のそばが育つのに適しています。この気温差のおかげで、そばだけでなく、スイカやお米などの農作物も甘く、おいしく育ちます。

大石田の中心から少し外れた場所にあるそば畑に行くと、広大な畑が山々に囲われ、鳥のさえずりも聞こえてくる何とも気持ちのよい場所でした。ところが、私が訪れたそば畑になるはずの場所には、スイカが植わっていました。そばの発育は、種まきから収穫まで約3ヵ月と早いので、夏のスイカを収穫した後に、そばを育てるのだそうです。しかし、偶然にも畑のあぜ道に数本、そばの花が咲いているのを発見しました。去年たまたま落ちた種から発芽したようです。白くて小さな花がとても可憐で、ハートのような形の葉っぱもとてもかわいらしかったです。そこで、そばの花の香りを嗅いでみましたが、残念ながらほとんどしませんでした。私は、「花からもそばの香りがするのかしら?」と思っていたのですが、少し見当違いでした。そばの香りを楽しむためには、挽きたてのそばを食べに行くのが一番だと思い、さっそくそば屋に行ってみることにしました。

ここ大石田町には、たくさんのそば屋があり、どこがよいのか迷ってしまいます。今回は大石田の中でも標高が高い、次年子地区に行き、そば食べ放題にチャレンジすることにしました。そば屋は山の中の風情ある佇まいの一軒屋で、山奥にもかかわらずたくさんのお客さんで賑わっていました。

そこで目にしたのが女性がそばをつくっている光景です。そういえば以前、大石田のそばを食べに来たときもおばあちゃんひとりで切り盛りしている店に入りました。それもそのはず、大石田では、そば振る舞いという伝統があるそうで、各家庭のそば打ちの技術を主に女性が継承し、大切なお客さんにもてなしてきたそうです。

特に美味しさが評判になった家の軒先にのれんを掲げたのが、そば屋の始まりとか。そばと一緒についてくる付け合わせのお漬物や山菜も素朴な家庭の味がします。母から子へ、また嫁へとその家庭の味として長い間受け継がれてきた、そばの里。そばのやさしい香りが町中にあふれているようです。

それにしても、歯ごたえといい、芳醇な香りが口の中いっぱいに広がるそばは本当においしかったです。この香りは、そばに含まれる揮発性の油脂(脂質)です。そばが新しいほどこの油脂が多く含まれているので、新そばほど香りがよいのです。粉にしてからは特に揮発しやすく、酸化もしやすくなります。新そばや挽きたてがおいしいのはこの成分によるところが多いのです。また、そばは近年、健康食としても見直されてきています。11月の上旬にはとれたてのそばを味わう、新そば祭りが開催されます。伝統の味、皆さんも食べに来てけらっしゃい。
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