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アロマテラピーワールドマガジン トルコ編第3回 エステティックサロンにおけるアロマテラピートリートメント
山下 千恵   やました・ちえ
AEAJ認定アロマテラピーインストラクター。
日本大学農獣医学部農芸化学科卒、ファンケル化粧品商品企画勤務後、自然療法を学ぶ。アンカラ在住。
トルコでは“アロマテラピーサロン”として営業されている店はまだ非常に少ないのですが、ここ数年、エステティックサロンに少しずつアロマテラピートリートメントが取り入れられるようになってきているようです。観光客が多く、また経済の中心地であるイスタンブールや、ヨーロッパからの長期滞在者が多いエーゲ海・地中海沿いのリゾートホテルなどでは以前よりアロマテラピーサロンやアロマテラピーを取り入れたエステティックサロンがありますが、ほかの地域にもゆっくりと浸透しつつあります。私の住む首都アンカラは、政治の中心地であり多くの学生が住む街なのですが、ショップが並ぶメインストリートや高級住宅地にあるエステティックサロンには、アロマテラピートリートメントがメニューに載せられています。最終回は、アンカラにあるエステティックサロンでのアロマテラピートリートメントについて取材したものをレポートします。
私が訪れたエステティックサロン「ニル」は、ニルギュルさんとニルフェルさん姉妹が経営する個人総合エステティックサロンで、アロマテラピートリートメントのほかにフェイシャルケア、ボディケア、脱毛、手足のネイルケア、メイクアップ、医師の指導によるシワ・にきび・シミ治療などがあります。彼女たちのほかに、それぞれ専門の4名のエステティシャンと治療に携わる医師1名が所属しています。サロンは、おしゃれなショップが並ぶメインストリートに面したビルの2階にあり、明るく清潔で、施術に応じて小部屋に分かれています。予約した時間に行くと、白衣を着けたエステティシャンが笑顔で出迎え、部屋に通されると、準備をするよう伝えられました。12畳ほどの部屋には3つの施術ベッドが並び、脇にはボディケア用の器械などが備えられていました。脱衣かごや目隠しパネルなどはなく、「トルコらしいなあ……」などとのんびりと準備をしていると、静かににこやかにエステティシャンが入ってきました。マッサージ担当のシェリフェさんは、あらかじめ用意されたオイルを手にして、まずはうつ伏せになるよう指示しました。背面にタオルがかけられると、マッサージは脚の裏面から始まり、背中、腕と手、腹部と胸部、顔、最後に脚の前面という流れで進められました。英語のポップミュージックとともに甘くさわやかなフローラル系の香りが漂います。日本での一般的な施術と異なり、スピードのあるリフレッシュさせるような手技で、ときどき指圧を加えながら流れるように進みます。軽やかな中にも心地よい圧力感があり、冷え切った身体がじんわりと温まっていくのが感じとれました。施術者の指先が必ずしも身体に密着しておらず、やや雑な印象を受ける要素もありますが、リズムの強弱があり、身体の深部に訴えるようなダイナミックな流れは、ほどよい刺激があり、いつの間にかうとうととまどろんでいました。最後は徐々にスローダウンし、マッサージが終了すると「そのまま少しお休みください」と告げ、施術者は部屋を出ました。
私が今までに経験したアロマテラピートリートメントと今回の「ニル」でのアロマテラピートリートメントを比較すると、今回のものは爽快なリズムとスピード感のある、どちらかというと心理面よりも肉体面への作用に重きが置かれた印象のマッサージでした。マッサージ前に心身の状態や香りの好みを聞く、といったコンサルテーションは行われず、私のマッサージのためのオイルも、施術者が調合されたブレンドオイルの中からリラックスを目的に選んだものでした。
オーナー姉妹は、国家教育省(日本の文部科学省にあたる)の職業訓練校で美容に関する知識と技術を学んだ後、国の認定試験と実務を経て、10年来サロン経営をしています。アロマテラピートリートメントは、アンカラにあるガージ大学の教授タメル氏より、理論に沿ってスポーツマッサージを学び、タメル氏が目的別にブレンドしたオイルを使用しているとのことでした。今回のマッサージに使用されたオイルは、ネロリ、ラベンダー、ジャスミン、タイム(そのほかにも含まれる)などのブレンドで、個人的にとても気に入りました。タメル氏のブレンドなので、精油のブレンド比率やベースオイルは不明とのことでしたが、オイル臭がなく、アーモンドオイルをやや重くしたような感触で、肌への浸透性のよいブレンドでした。価格は顧客のリピートを意識し、かなりリーズナブルな設定がされており、全身のアロマテラピートリートメント45分で35ミリオントルコリラ(2,900円程度*)です。価格はサロンにより大きく異なり、同じメニューでも100ミリオントルコリラというところもあるようです。「ニル」でのアロマテラピートリートメントの客層は35歳以上で、年配の方の利用が多く、リラクセーション目的というよりもボディのリフティングやセリュライトの改善のためにほかのメニューを組み合わせて利用されることが多いそうです。トルコでは心理的なものに対して、つまりリラクセーションなど結果が明確にわかりにくいものに対しての価値観が、多少異なる面があるからなのでしょう。
この国ではあいさつをする際に、握手をしながら両ほほにキスをしたり、抱き合うというような「触れ合う」習慣が日常の中にあります。またうれしいときや悲しいとき、例えばひとつのりんごを手にしたときでさえも、これを「分け合う」という行為を当然のように行います。アロマテラピートリートメントの根元でもある、この「触れ合う」「分け合う(分かち合う)」という行為は、私たちが失うことのできない癒しの行為なのだと、思いもよらずここに来て再確認することになりました。
短い間でしたが、ありがとうございました。
※価格は2004年1月のもので算出。
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