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アロマテラピーワールドマガジン ガーナ編第2回 ダシバ! ガーナへシアバター石けん工房をつくりに
宇田川 僚一   うだがわ・りょういち
(株)生活の木常務取締役。1975年以来ハーブ・アロマテラピーの開発・普及に取り組む。(社)日本ホビー協会理事、全国ハーブサミット連絡協議会委員、地域中小企業支援センター専門家、中小企業金融公庫成長新事業育成審査員、当協会理事・環境委員会委員長。
「ダシバ!(おはよう)」「ナー(受け言葉)」またひとしきり朝の挨拶が始まりました ("今日は失敗しないでちょうだいよ…頼んまっせ"と祈るような気持ちでスタートです)。
「宇田川さん大変!」(あー…もうだ!)
「今行きます!」(今度は何だー…)
ジェトロ専門家としてナイジェリアとガーナで指導した結果、数あるシアバター生産サイトの中から、ガーナ北部の町タマレにある女性グループを選定しシアバター石けん製造を指導するため3週間ずつ2回にわたり派遣されました。コールドプロセスでの製造法ですから、乾燥にどうしても1ヵ月は必要です。そのため2回に分けての報告です。専門家ですから作業日誌風にできごとを追っての報告となりますが、お許しを。
その前に主な登場人物を紹介します。 石川大使(ガーナ日本大使館)、JETRO・志釜氏(貿易開発部開発支援課)、中本氏(ナイジェリアラゴス事務所長)、マイケル氏(ラゴス事務所スタッフ)、アディサ女史(NGOアフリカ2000ネットワーク代表)、選抜された6人は後ほど紹介します。
1.活動内容
与えられた使命は
(1) サグナリグウーマントレーニングセンターを石けん工房とする
(2) 選抜された人員をハンドメイドソーパーに仕立て上げる
(3) なおかつ、その過程でできあがったソ−プを製品として日本に送り込む
というものと理解して活動を行いました。
1度目の派遣は工房づくりと製造、カット、乾燥まで。2度目に仕上げ整形、包装、梱包、輸出手続。与えられた時間は限りがあり、失敗は許されません。そのため事前の計画に時間をかけました。
現場は11月に視察した多くのサイトのひとつ。記憶もうろ覚えのため当時の写真やビデオを見直し、計画を練りました。
2.1度目の事前計画
  • 蚊やハエなどの防虫対策 … 防虫網を日本から事前送付、設置。
  • 作業台の確保、設置 … 隣室の縫製工房から調達、設置。
  • 製造に不可欠な熱源の有無 … 現地判断(プロパン、薪、炭)。
  • 製造に必要な道具、備品 … 石けん工房に必要な最低品目、数を事前送付。
  • 乾燥庫、乾燥スペース … 組み立て式メタルラックを事前送付、設置。
    埃よけに布でラックカバーをつくり事前送付。
  • 製造マニュアル … カラー写真入りで製造工程パネル作成(6種)。
  • 苛性ソーダ注意喚起 … 髑髏マークで危険物注意パネル作成(2枚)。
  • シアバターソープ生産概要リスト … 生産計画、品名、量、工程、レシピ等々。
  • 上記のほかに、大工道具を一式BOXに入れ事前送付。これが思いのほか役に立ちました。後はすべて現地合わせ、現場力で対応を決意して出発です。
3.1度目の実行報告(2006.5/17〜6/11)
5/17 (水)
20:40 羽田発(志釜氏と同行)21:55 大阪着、23:15 大阪発
5/18 (木)
5:30 ドバイ着、7:30 ドバイ発 12:00 アクラ着(中本、マイケル氏合流)
14:30 大使館訪問
[参事官、二等書記官、専門調査員に今回の目的説明。前回報告後、大使がシアバターに非常な理解を示され、誰彼となくシアバターのお話をなさり、まるで「セールスマンのようです」と聞かされる。うれしい限りであるとともに、何としても成功させねばと再決意]
16:00 アフリカ2000訪問、打ち合わせ
[アディサさんと打ち合わせ。6人の精鋭を選出済み(女5、男1)。2人は違う村から。曰く、人選に当たってはその後に移住の可能性のない既婚者ばかりを選んだ。じっくりと教えてもらいたい。今回の目的、計画、段取り、並びに今後の予定説明]
17:30 JICA訪問
[事務所にて村上、梁瀬、草苅各氏と懇談。今回の目的、計画、段取り、並びに今後の予定説明。送り込んだ荷をJICAから受け取りピックアップトラックに積み込み。5Fから荷下ろし]
5/19 (金)
7:00 車でアクラ発(中本氏と別れ志釜・マイケル氏と3人)
20:00 タマレ着(道路工事中と豪雨のため13時間かかる)
5/20 (土)
8:45 ホテルにアディサさん来る、打ち合わせ
9:00 ホテル発(サグナリグウーマントレーニングセンター着後、アディサさんの次なる計画にある候補地、新センターを先に視察することに。かなり大きな施設だが今のところ使われていない。電源にも問題あるようだ。あくまでも将来のことか)
10:30 サグナリグにて選抜された6人を交えミーティング(30分ほどで今回の目的、計画、段取り、並びに今後の予定を説明。何をするか、どうなるのかを理解させる。人間はこれを説明し理解させてやらないと不安からか納得して動けないもの)。そう理解させたところで11:00より作業にかかる。工房スペースは約20坪。前回は区切りがなかった隣室の裁縫室とはベニヤで仕切られ、一応独立した部屋にはなっているが、床はコンクリートで所々に小穴、室内は薄暗く、入り口2ヵ所は木製の扉で開けっ放し。見渡したところではフラット(水平)な所がない。ハエは多いし…。だが、それをいっていても始まらない。まずは作業にとりかかる。
[本日の作業と進行状況]
  • 車から荷下ろし、工房に運び込み(何と荷物運びは女性の仕事らしく、30kgはあろうメタルラックを頭の上に乗せて軽々と運び込む)
  • メタルラック8台組み立て、各棚に防虫網を取り付け、布カバーかけ(箱からパーツ取り出し組み立て。通常は棚板5枚4段のラックだが、もう4枚追加で8段の乾燥棚に組み立てる)。関係者全員参加で作業。現地マネージャーたちが活躍、女性たちも遅れることなく木槌、金槌を持って組立作業。意気込みやよし。組み立て後、各棚に防虫網を取り付け。ラック棚板の間隔を緩和しできるだけフラットにするため。サイズに合わせ防虫網カット。取り付けは細い針金5〜6cmカットしたもので捻り止め。布のラックカバー(前面巻き上げ式マジックテープ止め)サイズ、機能性、ピタリと決まった。
  • 作業工程パネル壁にかける(製造工程をカラー写真入りで解説。正面入り口から見て右壁面に吊り下げ設置)。
  • 隣室からテーブル調達、設置(ミシン台としてつくられたものらしい。使われずに積み上げられていたものをもらってくる。ただし、天板が反っていたり、すき間が空いている物ばかり。もちろん脚なども曲がっている。できるだけ大工道具で修正する)。
  • 4ヵ所の窓に防虫網張り(ひと通り各作業をやって見せ、皆にやらせ始めたところで各窓に防虫網を取り付け。コンクリート用の釘、輪止めつきの釘が役に立つ。思惑どおり)。
  • メタルラック1台を道具棚に(製造に必要な最低限の道具、備品を開梱。ラック1台に配置、道具棚とする)。
18:00 終了。
メモには「疲れた」とだけしか書いてありません。このときの作業を見ていて「これは大丈夫だ」と確信。参画する人々の意気込み、特に女性たちの動き、やる気、一所懸命さが感じとれました。
追記…この日は何としても終わらせたいので昼食抜き。これがいけなかったのかその後も昼食は一度もなかった。後日聞くところによるとJICAでは弁当ぐらいは欠かさないとの由。
5/21 (日)
休日(一日ホテルでデスクワーク。志釜・マイケル氏はマーケットへ視察)
5/22 (月)
8:00 石けん製造指導(パネルを使い製造工程を説明。その後1バッチ (バージンシアバター) を試作しながら解説。シアバターを溶かす熱源は、状況判断の結果、裏口テラス右奥で炭を使うことにする)。
[本日の工夫]
  • シアバターの溶解時は埃が入らないよう蓋をし、計量時には茶漉しで漉す。温度を上げすぎないこと。
  • 水、オイルともすべて液体計量時には茶漉し使用を義務づけ。
  • シアバター、ピーナツオイル計量は、計量ビーカーに目印線を引き計量場所を設定、マークをつける。
  • 温度計に針金巻き・安定とずり落ちないように。
  • 苛性ソーダ瓶の蓋に釘で穴あけ。少量ずつ入れていくため。
  • 型に敷くペーパーの4隅を切り落とす。折重なりによる完成時の凹みを防止するため。
  • 流し込んだ型に被せる布、余ったラックカバーの布を隣でステッチ縫いをしてもらう。糸屑防止。
皆、熱心に見ている。できるだけ今やっていることの理屈を加えながら試作。「明日からはきみたちがやるのだ」といって注意喚起。
13:30 終了。
その後、後片づけ、清掃。清掃時に雑巾がけを見ていると、ひらひらに伸ばした布を向こう側から撫でるように手前に引くだけ。さっそく日本式の雑巾がけを教える。皆おもしろがってやっていたが、その後は2度と見られなかった。
15:00 ホテル着。
5/23 (火)
8:00 石けん製造、カット指導(出入り口に余った防虫網で現地のカーペンターが内戸形式の網戸を設置。いくらかはよい。6人のメンバーを2人ずつ3チームに分け、3つの作業台に配置)。

ここで6名と組み合わせを紹介(漢字を喜ぶのと名前を覚えるために海外ではよくやる手である)。




アビバ…阿美婆 (ああ美しいお婆さん) 40歳 (シアバター生産のリーダー格)
サマタ…作真多 (真をたくさんつくる人) 23歳 (子ども2人)
アダム…愛多夢 (愛と夢を多くもつ人) 24歳 (独身、別な村から)
サナト…作納富 (富をつくり納める人) 38歳ぐらい
ルカヤ…留加家 (プラスを家に留める人) 35歳ぐらい
アドライ…吾努羅肥 (吾が努めはすべてを肥す) 35歳ぐらい (男性、別な村から)
「さあ、どうぞ。やって」の冷たく突き放した非情なかけ声で3チームが製造にかかる。自分たちでやらせアドバイスの形で進める。パネルを見、相談しながらやっている。
10:30 1バッチ何とか終了。休憩後の11:30から2バッチ目を製造。攪拌作業に入ったところで昨日作成のソープを型出し、カット (4分割、それを11分割、計44pcsに) 、乾燥棚に収納、をやって見せる。
やっていて、わかったが基本的なことが苦手。型に敷くペーパーに30cm四方の四角形を書き、その型の肉厚分を縦横2mm内輪にし、その延長線上の4隅に定規で直線を引き、それをカッターで切り落とすのだが、これに苦労している。若い2人は何とかこなすが、年輩の人はできない。定規の使い方、カッターの使い方を手取り足取り、試し切り用の紙を切らせるなどして教える。
本日より床清掃用のモップ、出入り口の玄関マット、かけ時計登場。合わせて工房は土足禁止。
サバンナの夜明けと命名した石けんイエロー用の色素は、イエローシアバターそのものを調達することで解決しそう。
13:45 2バッチ目型入れ。
14:45 終了。
[本日の工夫]
ソープカッター(4ツ切り用)の高さ調節ストッパーが荷に入っていない。これは型の両サイドにかませてピアノ線の高さを調節、厚みを均一化させるための必需品。どこかで紛失したようだが、そうもいっていられないので、隣室の裁縫室を探索し、機織りに使われたらしい3尺ほどの一本の木を調達。幸いに厚みは均一なのでこれを細切れにして両サイドに積み上げた。縦にしたり横に重ねたりして何ときっかり7.5cmに調節できた。型出し後の完成品は一辺が30cmなのでピタリのはず。
5/24 (水)
7:50 石けん製造、カット指導。到着するとすでに作業にかかっている。
8:00 バージンシア製造。アダムの組で苛性ソーダ瓶が割れる。苛性ソーダを計量したビーカーに残る残滓を少しでも使おうと、一旦「ビーカーに水を入れ、それも合わせて瓶に入れろ」と指示していたのだが、その分だけを入れて攪拌していたため、高温になり割れたもの。全員に一気にすべての水を入れるよう指示。ボールにこぼれた苛性ソーダ水はビネガーを入れ中和させてから捨てさせる。
昨日の1バッチ目をカットさせる。サマタが1番手。若いのと積極的なのか何でもやりたがる。ただし、大胆なので慎重さに欠け、「エイ、ヤッ」とばかり見事にえぐってしまう。慎重に、ゆっくりと、神経を集中してを教える。次がアダム、こちらはいくらか慎重。ただ慎重のあまり途中で動きが止まってしまう。カットは不思議なものでゆっくりでも止まらずに動いていれば完成時に波(ギザギザ)がつかない。止まると、てきめん波を打つ。まあ、今回はこんなことも織り込み済みだが、それにしても目を光らせていないと危ない。
12:30 1バッチとカット終了。
13:15 2バッチ目製造と昨日の2バッチ目をカット。バージンシアバター12バッチ完成。
14:30 終了。志釜・マイケル氏、アディサさんインタビュービデオ撮り。全員にここまでの感想を聞き、写真撮り。
16:00 ホテル着。
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