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アロマテラピーワールドマガジン ガーナ編第1回 ダシバ! ガーナへシアバター石けん工房をつくりに
宇田川 僚一   うだがわ・りょういち
(株)生活の木常務取締役。1975年以来ハーブ・アロマテラピーの開発・普及に取り組む。(社)日本ホビー協会理事、全国ハーブサミット連絡協議会委員、地域中小企業支援センター専門家、中小企業金融公庫成長新事業育成審査員、当協会理事・環境委員会委員長。
ガーナ北部のサバンナ地帯に位置する町タマレ、朝8時。サグナリグウーマントレーニングセンターの一日はダバニ語のこの挨拶から始まります。「ダシバ (おはよう)」・「ナー」(受け言葉?) が、ひとしきり繰り返された後、いよいよ石けんづくり。今日はバオバブを使ったレシピで……。
100日以上は20年、ここ数年は170〜180日を超える出張を続け、会社の仕事以外にも頼まれると嫌とはいえず何のお手伝いでもしてしまう私が(頼まれなくても……?)今回は日本貿易振興機構(ジェトロ)の専門家としてODAの一環、西部アフリカ「シアバター」産業育成事業のため、灼熱と赤土の大地アフリカに来ています。
昨年11月の3週間、ナイジェリア・ガーナの女性グループサイトを視察・指導した結果に基づき選定したガーナのこの地に、シアバター石けんを手作りする工房をつくるためです。限りなく1次産品に近いシアバターに、より付加価値をつけ石けんという2次産品を生産しようという試みです。
実際の工房づくり、石けんづくりの指導は、今年の5月に3週間、8月に3週間でしたが、ついでにシアの木、シアバターについても随分と調べましたので、2回に分けて報告させていただきます。
今号ではシアの木、シアバターについて、次号では選抜された6名のガーナ人スタッフをハンドメイドソーパーに仕立て上げるまでの涙ぐましい経過を報告したいと思います。それではおつき合いください。
シアの木・シアの実
シアの木は、アフリカ大陸の北緯5°〜15°に分布するアカテツ科の双子葉植物です。学名はButyrospermum parkii。Vittellria pradoxaの俗称をもち、英名でShea Butter Treeと呼ばれる常緑の小高木です。  
北半球に位置するアフリカ大陸の湿潤および乾燥サバンナのシアベルトと呼ばれる地帯に分布し、一般的にはブッシュの中に自生しています。樹高は25mほどにもなりますが、農地内のものは管理され15〜20mに、樹径も1mほどの大きさに保たれています。  
自生以外は通常、接木で植えられます。植林されたシアの木は実をつけるまでに20年もかかりますが、その後200年にわたり実をつけるという貴重な樹木です。樹皮は大きな葉のついていた跡が残るため荒く、葉は小枝の先に多数集まり、長い楕円形の形をしています。  
葉は薄めで長さは8〜10cm程度、葉枝の長さは1〜2cmです。花は直径が1cm程度、葉のつけ根部分に単生し黄色がかったクリーム色で、ひとつの小枝に10〜40個も開花します。  
そして果実は5〜8cmの卵型をし、実は薄く、ちょうど小さめな枇杷のようです。皮を剥いて薄い果肉の部分を食べますと、中から鶉の卵大の固い種が出てきます。これがシアナッツ。またこの殻を割ると出てくるのがシアカーネル(仁)で、これを加工しシアバターにするのです。ちなみに、果肉はアボガドのようなバターっぽい味がし『パラダイスの味』と喩えられるように甘くて美味です。人間だけでなく、鳥や動物、サバンナの生き物すべてが、このすばらしい自然の恩恵に与っています。
収穫
収穫は4月〜8月にかけて行われ、特に4月〜6月の雨季が最盛期です。熟れて落ちたシアの実を夜明けとともに拾い集めます。この仕事は女性の仕事らしく、女の子も手伝っています。そして採集後は大きなカゴや洗面器などに入れ、頭に載せて悠々とご帰還です。「悠々と」と書きましたが、まさにそうです。ガーナの女性に猫背は見受けられませんし、歩き方はモデルさんのようです。きっと小さなときから荷物を頭に乗せて運んでいるからでしょう(モデルさんも歩き方の訓練に本を頭に乗せますから理にかなっています)。頭に大きな荷物を乗せ、背筋をピンと伸ばし、まっすぐ前を見つめ、ゆっくりと悠然と歩く姿には、ついつい見とれてしまいます。
利用
シアの木が分布する地域の人々は、古くからシアバターを食用や薬品、灯油などに利用してきました。その他にも樹皮を水に浸して染料としたり、残滓を家畜の肥料としたり、また、木部は非常に堅く、なおかつ耐朽力に優れるため、各種用材として利用されています。そして化粧用です。ガーナでは紫外線や乾燥から肌を守り(生まれたての赤ちゃんは全身にシアバターを塗られます)、傷ややけどの治療に、筋肉痛やリュウマチ、ヘアケア、白髪・脱毛の予防等々、なくてはならない万能薬として生活に溶け込んでいます。これは特別に教えてもらったのですが、モスリムの習慣に割礼があります。生後3ヵ月の男の子に施されるそうですが、このときの止血と消毒薬としても使われるそうです。
効用
シアバターは成分のほとんどをステアリン酸、オレイン酸が占めるため、酸化しにくく、肌につければ長時間しっかりと乾燥から守ってくれます。ステアリン酸はヒトの皮脂にも含まれる成分で、肌にとてもなじみやすいといわれます。また、豊富に含有されるという脂肪酸以外の微量成分は、トコフェロール、カロチノイド、トリテルペンなどで、トコフェロールは神経系を強化、細胞を保護する作用があり、カロチノイドは皮膚や粘膜の再生を助けます。トリテルペンアルコールは水分と結合する性質があり、肌をやわらかくするといわれます。これらのことから、シワやたるみを防ぎ、アンチエイジング効果が期待できるといえるのではないでしょうか。
シアバターの流通
シアバターは、1990年中頃までおおむね2つの経路で流通していました。
[1] 西アフリカ国内で手作業にて製造され、ローカルマーケットで売買されるシアバター(クルードバター・未精製の原油脂)
[2] 西アフリカから、シアカーネルで輸出され、欧州の油脂メーカーで溶剤抽出にて製造されるシアバター(精製バター)
(1) 西アフリカ国内市場(食用油脂)
西アフリカ諸国のシアベルト地帯では、伝統的に地域のコンパウンド(家族集落)が自家用、および販売用(業務用、家庭用)としてシアバターを製造しています。これらは主に食用油脂として使用されるものです。そしてこのマーケットはすでに飽和状態です。  製法は、牛や豚の脂身の採油に使われる湿式融出法(wet rendering)に似た原始的な手法で、そのほとんどの工程が手作業で行われています。

(2) 海外市場(チョコレート)
ガーナをはじめとする西アフリカ諸国からのシアカーネルの輸出は1960年代にスタートしています。シアカーネルを購入するのは欧州の油脂メーカーで、ここでシアカーネルはシアバターに加工、精製されます。主要購入国はデンマーク、オランダ、イギリス、スウェーデンなど。これらの国々は、チョコレートへのCBE(Cocoa butter equivalent:代用ココアバター)使用を許可している国であり、シアバターの需要がチョコレート業界にあることがわかります。  シアカーネルの需要は、その年のカカオ豆の市場状況によって左右されますが、おおむね年間5〜10万トンベースで推移しています。輸出国のシェアは変化するものの、過去40年間、西アフリカ諸国全体の輸出量がほぼ変わらないのは、チョコレート産業におけるシアバターの市場が、ほぼ飽和安定状態であることを示しています。
第3のマーケット
このようにシアバターのマーケットにおける存在は、国内市場の飽和、海外既存市場の飽和と、非常に厳しい環境に置かれています。しかし、このままではいけません。シアバターをもっと使ってもらいたい、もっと輸出を増やしたい、というのが生産国です。それにはどうするか。第3の市場を開拓するよりありません。それもこれからの可能性を秘めたマーケットです。そこで考えられるのが自然化粧品としての用途です。現に、ロクシタンやボディーショップなど欧米の自然化粧品業界が、シアバターの保湿性に着目するなどして取り扱いを始めています。この萌芽しつつある第3のマーケットに照準を合わせるべきだと思います。それも限りなく1次産品に近いシアバターに、より付加価値をつけた2次産品としての「製品化」が最も望まれているのです。
ジェトロの取り組み
ジェトロでは2004年度〜2006年度にわたり、西部アフリカ「シアバター」産業育成支援事業を計画。初年度は東京農業大学講師の中曽根勝重氏を専門家とし、シアバター現地産業調査を行いました。2年度目はシアバター現地取引調査として、ビジネスの専門家を派遣。そして3年目はシアバター付加価値製品の輸出成功事例創出および日本企業関係者、消費者へのシアバター広報の実施を行うという取り組み。9月にはアフリカン・フェアを開催し告知に努めることになりました。
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