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アロマテラピーワールドマガジン ドイツ編第3回ハイルプラクティカー3
手塚 千史   てづか・ちふみ
(株)ヴィーゼ代表。S・F・リチィ著『天の香り』翻訳出版を機に1994年ヴィーゼ社設立、「天の香り」精油の販売開始。1998年ドイツのアロマテラピー協会の日本支部フォールム・エセンツィア・ヤーパン設立。副代表を務める。
連載3回目となりましたが、ドイツのハイルプラクティカー制度に興味をおもちいただけたでしょうか?
今回はハイルプラクティカー試験について、また医療行為とは何か、外国人がHPになれるかどうかを簡単に書いてみます。HP試験で判定の際に一番大切なのは、国民全体の健康を脅かす危険性があるかと明記されている点は、私も驚きました。いかにもドイツですね。
試験
ハイルプラクティカー(Heilpraktiker、以下HP)法はその成り立ちから、数年前まではドイツ全土で約400の厚生局が独自にHP試験を行っていた。形式、期間、組織、なかでも試験の難易度が各厚生技官(厚生局に勤務する医師)の裁量にまかされていたので、試験で要求される知識の差が著しくなり、平等取り扱いの原則となじまなくなった。連邦州ごとに比較すると、受験者の不合格率は89〜10%まで変動があった。その結果、試験を受けるために移動する現象がおき、「やさしい」と評判になった厚生局では受験者数をさばききれなくなり、基準を厳しくするようになった。1992年、試験に関する不整合を除去するために、連邦委員会が設置され、HP志願者のための試験指針が提案され、各州で検討の結果、新しい条例ができた。こうして現在は比較的統一的な試験が行われている。最近、大学での医師の試験問題を作成する機関がHP試験の問題も作成するようになった。
試験の内容は医学的な基礎知識に限られている。志願者は自らの能力と行うことのできる行為の限界を知り、危険性を認識して、適切に自分の行動をコントロールする用意があることを明瞭にしなければならない。試験には筆記と口頭試問があり、口頭試問では簡単な実技が課されることもある。
バイエルン州を例にとって説明する。
試験は半年に1度、7つの管区と3つの都市で同時に行われる。筆記テストは120分で、60問の選択問題が課される。この75%(45問)を正解した人は口頭試問を受ける権利を得、試験期日の3週間前までにその通知を受けとる。口頭試問では1〜4人までの志願者が一緒に受験し、1人当り30〜45分間テストされる。試験官として2人のHPが立ち会い、実技が課される場合には試験委員会の構成員全員が立ち会う。その際志願者が将来どの領域で仕事をしたいかが考慮される。口頭試問のときは書記が記録をとるものとする。厚生技官はHP試験官の意見を聴取し、国民の健康をおびやかす危険をあらわしている手がかりがあるかどうか、判断する。口頭試問の終わりまでに結果が受験者に伝えられる。
内容はバイエルン州を例にとると、以下のようになる。
・医師でない者が治療を行う場合の法的な限界を含む職業像と法律について
・ハイルプラクティカーの治療法と診断法の限界と危険について
・解剖学、病理解剖学、生理学、病態生理学の基礎知識、伝染病、悪性腫瘍、重度の精神
 障害の認識と識別における基礎知識
・一般的な病気学における基礎知識、国民病*とくに代謝疾患、心臓・循環障害、変性疾患
・急性の緊急事態と命にかかわるケースの認識と応急手当
・病歴の調査方法、病人の直接の診断方法(目診、触診、打診、聴診、反射テスト、脈測定
 と血圧測定)
・衛生管理、消毒、滅菌
・注射と穿刺のテクニック
・検査値の解釈
※ある国で近隣諸国よりも多発している疾患。例えばドイツでは偏った食生活やストレスによる心臓・循環器疾患、アメリカでは食事による肥満、スウェーデンでは冬の日光不足によるうつ病などで、必ずしも病原体によらないのが特徴。
活動領域
HP法第1章の確定とは診断をくだすことで、病歴を調査して考慮に入れることも含んでいる。例えば頭痛の患者にどこが痛むか、痛みが頭の片側か否かを聞くことは、「確定行為」にあたる。
 
治療とは病気の除去であり、緩和とは病状がはっきりと改善されることをいう。健康な人に病気を避けるために一定の措置を勧める予防は、「病気の治癒でも緩和」でもない。
 
HP法第1章の定義には弱点がある。この定義では、一方では眼鏡商やシューメーカーは眼鏡や靴の中敷きをつくることによって、一定の病気または苦しみを緩和するので、医療行為を行っていることになる。他方、顔の美容整形や豊胸手術は、その状況では病気とはいえないため、医療行為ではない。そのため裁判所は医療行為であるか否かの判断基準として、以下の点をあげている。
当該行為はその方法から病人の治療と同等でなければならない。絆創膏を貼るとか、自分の子どもが普通の病気にかかった際に看病するとか、些少な介護・ケアは医療行為にはあたらない。
当該行為は医師としての、あるいは医療上の専門知識を前提としていなければならない。これによって、例えば美容整形は「医療行為」にあたることとなる。
当該行為が不適切になされるならば、健康上の損害を引きおこしかねないこと。
この最後の基準は非常に重要で、能力のない者が病人の治療をすることの危険からクライアントを保護する治療禁止を意味する。また、HPが診断の結果を十分に説明しないことも、損害につながると考えられている。
ドイツ国籍をもっていない外国人に対する許可
1957年以来、HP法に関して4点の改正がなされている。その1点は、もともとはドイツ人だけ、後にEU共同体の国民に限定されていたHPの許可が外国人にも開放されたことである。以来、国籍を問わず誰でもHP法に基づく許可を申請できることとなった。ただし当該外国人がドイツでのみ営業できるのか、故国で治療を業として行えるのかは、明記されていない。ちなみにほかの3つの改正点を示す。
(1)臨床心理を大学で学んだ心理療法士はほかの試験を受けずに「HP」の許可を得ることができるが、心理療法の領域だけに限られ、HPと名乗ってはいけない。
(2)1999年の新たな心理療法士法に基づき、医師とHP以外に治療を独立して行える職業として、心理学修得の心理療法士と児童・青少年心理療法士が公式に認可された。
(3)EU諸国はローマ、ブリュッセル、マースリヒト条約で自国においてどの職業を認めるか、それぞれ決定する権限を与えられたので、ドイツのHPは廃止されず、他方EUの他の加盟国もドイツのHPを公認することを強制されない。
ちなみに旧東ドイツでは1949年に「医師のための開業免許令」が公布され、その中にはHPの権利も含まれていたが、同時に後継者の養成は禁止されていた。1989年に東西ドイツの統一がなされ、旧西ドイツの法体系がドイツ全土で有効となったとき、1949年以前から営業していたHPは、ほんのひと握りしか残っていなかった。
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