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アロマテラピーワールドマガジン ドイツ編第1回 ハイルプラクティカー1
手塚 千史   てづか・ちふみ
(株)ヴィーゼ代表。S・F・リチィ著『天の香り』翻訳出版を機に1994年ヴィーゼ社設立、「天の香り」精油の販売開始。1998年ドイツのアロマテラピー協会の日本支部フォールム・エセンツィア・ヤーパン設立。副代表を務める。
この3回のシリーズで私は最初、ドイツの代替療法、オルタナティブな生活、どのようにクアが楽しまれているかを書こうと思っていました。けれども代替療法の情報を集めているうちに、今AAJの会員の皆さんが一番求めているのはハイルプラクティカーにまつわる知識ではないかと考えるようになりました。アロマテラピーに関わる方はご自分で意図しようと、しまいとメディカルな面にノータッチではいられない場合が多いと思います。日本では現在、医学的な治療は医師をはじめとする医療従事者に限られていますが、医師以外の人が必要な医学知識と自然療法を勉強し、経験を積んだ上で一定の試験を受けて資格をとり、治療できるのがドイツのハイルプラクティカー制度です。いろいろ参考になると思いますので、3回ともハイルプラクティカーを扱うことにしました。それでも誌面が足りないようです。法律が絡んできて、少し難解に思えるかもしれませんが、我慢して読んでください。法治国家においては、生きることすべてが法で規定されていることが多いのです。法律もまた楽しからずやです。
ハイルプラクティカーはドイツ語のheilen(治癒する)とpraktiker(実践する人)の合成語で自然療法士を意味します。この制度はドイツだけに存在します。ドイツの著名なアロマテラピスト、『天の香り』『樹』『大地の薬』『香りはシンフォニー』の著者スザンネ・フィッシャー・リチィ氏、『Magic Moon』の著者モニカ・ヴェルナー氏、『ベースオイル』の著者ルート・フォン・ブラウンシュヴァイク氏など皆ハイルプラクティカーです。ただし資格をとっていても、実際に開業してクライアントを診ていなければ、あまり高く評価されません。ハイルプラクティカーの多くは非常にレベルが高く、不断に自己研鑽を怠らず、特に慢性病、生活習慣病、疾病の予防の面で優れているといわれます。各種の代替療法を組み合わせて治療することが多く、植物療法、アロマテラピー、ホメオパシー、バッチの花療法、心理療法などがよく使われています。そのためアロマテラピーの国際会議、セミナー、研究会の参加者の大部分がハイルプラクティカーだといいます。
まず、ハイルプラクティカー法について説明し、その成立の背景と歴史を述べることにします。
ハイルプラクティカー法は1939年にナチスドイツのもとで制定され、現在もこの法律を読み替え、施行規則で補って使っています。それまでは1869年に定められた帝国営業法のKurierfreiheit(治療の自由)により誰でも許可または証明書なしに病人を治療することができました。例えば理髪師が手術することもしばしばありました。長い間この非医師が治療できるKurierfreiheitをめぐる論争があり、ヒトラーの時代になって初めてKurierfreiheitが廃止され、 ハイルプラクティカー法が制定されました。ナチスの意図は、誰でも勝手に治療行為ができる「治療の自由」の廃絶にあり、そのため非常に厳しく定義しました。それが民間療法を明確に規定し保護することにもなりました。本法の発効とともに12,000件の申請がありましたが、うち3,000人だけがハイルプラクティカーとして認定されたといいます。ナチス政権崩壊後、「養成機関の禁止」、「発効当時医療行為を行っていた者以外は許可しない」、「ユダヤ人には許可しない」など、憲法に抵触する部分は削除されましたが、法律そのものは存続しました。
医師免許をもたずに医療行為を業として行うことに関する法律 (ハイルプラクティカー法)
1939年2月17日 (RGBI.IS. 251) 帝国政府は以下の法律を制定し、ここに公布する。
第1条 医師として任命されることなく、医療行為を行おうとする者は、それに関する許可を必要とする。
本法所定の医療行為の実施とは、たとえ他の人に尽くす行為であろうと、病気、苦痛、人間の体の損傷の確定、治療、緩和のために職業として、または商売として行われる行為をいう。
これまで医療行為を職業として行い、今後も行う意向の者は、施行令の基準にもとづいて許可を得るものとする。この者は職業名'ハイルプラクティカー'を名乗ることができる。
第2条 医師として任命されることなく、医療行為をこれまで行ったことのない者は、第1条により、将来は特別な理由のある例外的な事例においてのみ、許可をうることができる。
すぐれた業績によって医療行為を行う能力があると信じられる者は帝国内務大臣の申請により、科学・教育・国民訓練担当大臣によって、緩和された条件で医学教育を受けることを許される。ただしこの者が医学教育を受けるのに適格であることを立証できる場合に限る。
第3条 第1条にもとづく許可は各地を放浪して医療行為を行う権利を与えるものではない。
第4条 本法所定の医療行為の遂行に専念したい者の養成期間を設立する、または運営することは禁止する。
第5条 許可なしに医療行為をなす者は、1年以下の禁固と罰金、あるいはこのどちらかをもって罰せられる。
第3条または第4条または本法の規定のどれかに違反する者は、150ライヒスマルクまでの罰金刑または禁固に処せられる。
第6条 歯の治療行為の遂行は本法の定めるところではない。
帝国内務大臣は総統の代理人と協力して他の治療活動をも本法の規定から除外することができる。
第7条 帝国内務大臣は総統の代理人と協力して本法の施行と補完に必要な法規定と管理規定を公布するものとする。
第8条 本法は公布の日に発効する。
同時に帝国営業法の56a条1項1号と148条1項7a号は、本法所定の治療行為の遂行に該当するかぎり、失効する。
  1939年2月17日 ベルリン
次回に施行規則、職業規則をご紹介し、法律が具体的に何を意味しているか、説明を試みたいと思います。医学用語は中村裕恵先生(統合医療ビレッジ・医師)にチェックしていただきました。
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